鑑定師ブログ

TOKI先生 「易者が語る日常の名言集」29


2019年11月5日
占い師:

29 動き出した二人の時間

29.①

 そして、仕事が終わった夜の7時。玉美氏は会社を出て裏のコンビニへと向かった。そこで栄子さんと待ち合わせをしている。一緒に会社を出てもよかったのだが、栄子さんの近くには暇割嬢と園子嬢がいる。勘ぐられて噂になるのも面倒なので別々に会社を出ることにした。コンビニで栄子さんと落ち合い、池袋まで出て、東口にある漫画喫茶ネットカフェへと向かった。二人の姿を他人が見たら幸せなカップルに見えるのかもしれない。今の二人はそれほど自然な雰囲気を醸し出していた。
 店の中はすべて個室になっていた。栄子さんと玉美氏は二人用の個室へと入っていった。ナニをするわけではないのにやたらと興奮する。玉美氏は動悸が激しくなり鼻息も荒くなってきた。栄子さんに悟られまいとなんとか平静をたもっている。栄子さんは玉美氏の興奮に気づくこともなくパソコンを立ち上げ、ネットに繋げた。玉美氏はそれを横で見ている。いろいろ検索してみても霊能者の弟子を募集しているところなどなく、弟子入りするにはコネがないとダメらしい。栄子さんは真剣な表情でパソコンを睨んでいる傍ら、玉美氏は別のことを考えていた。栄子さんとの距離が近すぎる。女性とこんなに近づいたのは本当に久しぶりだ。もし、栄子さんが霊能者に弟子入りしたら、一緒にいられなくなるんだろうか? そして栄子さんは、「やっぱり占い師を目指してみようかな?」とつぶやいた。そこで我に返った玉美氏はホッとした。占い師なら山に籠らなくてもいいし、会社も辞めなくてすむ。そう思うと玉美氏は無性にうれしくなった。

 玉美氏にとって女性に近づいたのはしばらくぶりのこと。これは物理的な距離だけでなく、心理的な意味でも。彼は女性というものになれていない。なれていないと、ちょっと親しくなっただけでも深くハマってしまうのだ。相手との距離感というものがうまく取れなくなるからね。易の世界では「穴に落ちたら、穴の深さを把握することが重要である」とある。穴とは相手のこと、深さは距離感のことを言う。近づきすぎて穴に落ちると、相手のことが頭から離れなくなってしまう。「愛しすぎる者はすべてを失う。醒めた心で愛するものは長く続く」と若いころアレキサンダー大王は言っていた。
 これと似たようなことは職場の人間関係にもあてはまる。例えば、職場でも話しているだけで鬱病になりそうな同僚はいるだろう。だが、向こうはなにかと擦り寄ってきて実にうっとうしい。そいつのことが頭から離れなくて夜中にうなされる。そんなのは相手にしないのが一番いいのだが、それもできない。この場合も心理的には恋愛と同じ状態。その原因は、近づきすぎたのだ。相手に近づきすぎたから、相手は親しみを感じてしまった。心理学では、相手と物理的な距離が近ければ近いほど親密さが増してくる。物理的な距離と精神的な距離は比例する。カップルがくっ付いて歩いているのがそれだ。逆に相手との距離が遠くなれば親密さも低くなる。二、三歩距離を空けるだけで、心理的な距離も遠くなる。イヤな相手はなるべく離れて会話をする。そして、親しくなりたい相手がいたら、一歩近づいて会話すればいい。それだけで心の距離も近づけるのだ。






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